高橋 賢

宇宙で筋肉や骨はなぜ弱る?

宇宙で筋肉や骨はなぜ弱る?

Space biology - Ken Takahashi

動物と植物が重力を感知するしくみ

有人火星探査や商業宇宙旅行が現実のものとなりつつある現在、宇宙で健康に暮らすことの重要性はますます高まっています。一方、宇宙で長期間滞在すると、筋肉がやせたり、骨がもろくなったりすることが知られています。これは、無重力環境が人体に及ぼす影響によると考えられていますが、そのしくみはまだよくわかっていません。

動物や植物が重力を感知するしくみの最新の知見をまとめた総説論文が、国際的な有力科学誌Natureの姉妹誌であるNPJ Microgravity誌に掲載されました。

Takahashi K, Takahashi H, Furuichi T, Toyota M, Furutani-Seiki M, Kobayashi T, Watanabe-Takano H, Shinohara M, Numaga-Tomita T, Sakaue-Sawano A, Miyawaki A, Naruse K. Gravity sensing in plant and animal cells. NPJ Microgravity. 2021 Feb 8. doi: 10.1038/s41526-020-00130-8.
https://www.nature.com/articles/s41526-020-00130-8

植物は、光による刺激がなくても地上で根を下の方向に、茎を上の方向に伸ばすことができます。この「重力屈性」は、植物の細胞が重力を感知し、細胞内・細胞間で情報伝達を行うことによって行われていることがわかってきました。また、先んじて行われてきた植物の重力感知の研究に続き、動物細胞の重力感知機構の研究が盛んに行われるようになりました。植物と動物という、一見まるで異なる生物において、重力という物理的な刺激を細胞が感じ取るしくみには、細胞の骨格を形成するアクチンというタンパク質の働きなどに共通点があることが、宇宙生物学の研究により明らかになってきました。また、長期の宇宙生活で筋肉が萎縮したり骨がもろくなったりする原因は、それぞれの組織における特有の重力感知・応答機構にあることがわかってきました。

この論文は、宇宙飛行士の古川聡さんを代表とし、日本の宇宙医学研究のエキスパートを結集した研究プロジェクト「宇宙に生きる」の成果の一部としてまとめられたものです。このプロジェクトは、文部科学省の科学研究費補助金の助成を受けた新学術領域研究として、2015年から2020年まで行われました。高橋は、この論文の筆頭著者として執筆を行いました。

プレスリリース: 宇宙で筋肉や骨はなぜ衰える?植物と動物が重力を感知するしくみの総説論文を発表
関連記事: レポート:宇宙生物学研究

* * *

Takahashi Lab at Okayama University uses principles of physiology, cellular and molecular biology, and biophysics. The purpose of the lab is to develop science and medicine by unveiling the mechanisms of diseases through collaborations with scientists, epidemiologists, and corporate alliances. The alliance includes Harvard University, Boston University, Tokyo University of Science, and PD Aerospace, Ltd.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

jaJapanese