高橋 賢

2023年を振り返って

2023年を振り返って

虎ノ門ヒルズ

2023年は、受賞5件、修士号取得1名、研究生受け入れ1名、インターンシップ生の海外派遣1名、海外インターンシップ生の受け入れ2名、論文出版5件、学会発表6件、共同研究4件、メディア報道2件、5編の論文編集、6編の論文査読と120時間の講義など、成果に恵まれた1年でした。

受賞5件は臓器チップ研究の産業応用に関するものです。国立研究開発法人NEDO、および筑波大学つくば臨床医学研究開発機構のメンタリングプログラムの受講により、事業計画の具体化が飛躍的に進みました。

論文出版1件は、UNCTADと岡山大学の共同プロジェクトで発足したタイ・NANOTECとの共同研究によるもので、コロナ禍の悪環境にもかかわらず成果を残した業績として特筆すべきものです。

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2024年の抱負

「大学での研究を通して人材育成を行い、研究の成果を事業化して社会に還元する」ことを基本指針とします。臓器チップ研究の事業化は、実験動物の犠牲を廃し、薬物の効果検証をより正確かつ効率的に行うことにより、製薬プロセスに革命をもたらすことを目的とします。具体的には、以下の目標の実現を目指します。

  1. 臓器チップ技術を用いた事業の法人化(大学発スタートアップ)
  2. 血液脳関門チップの仕様策定
  3. 心臓チップの機能実証、製薬企業との共同研究開始
  4. 学術研究を通した修士・博士人材の育成
  5. 国際共同研究、学術交流のさらなる強化

2023年の実績

受 賞

  1. 2023年2月1日 ファイナリスト. NEDO Technology Commercialization Program. 授与機関: 産業技術総合開発機構(NEDO)
  2. 2023年2月4日 オルバヘルスケア賞. 第5回 岡山テックプラングランプリ. 授与機関: オルバヘルスケアホールディングス株式会社
  3. 2023年2月4日 BIPROGY賞. 第5回 岡山テックプラングランプリ. 授与機関: BIPROGY株式会社
  4. 2023年9月14日 ファイナリスト. 大学発スタートアップ 事業展開支援プログラム U-START UP KANSAI オープンピッチ. 授与機関: 大阪商工会議所、関西イノベーションイニシアティブ(KSII)
  5. 2023年10月21日 上位選抜チーム. Research Studio 2023. 授与機関: 筑波大学つくば臨床医学研究開発機構 (T-CReDO)

学位授与

  1. 指導学生の李強が修士号を取得し博士課程に進学

李強は肺チップを用いた肺線維症モデルの開発の研究で修士号を取得し、博士課程に進学してこの研究をさらに発展させています。岡山大学の高橋チームでの臓器チップ研究は、研究人材の排出に貢献しています。

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研究生受け入れ

  1. 中国より研究生1名を受け入れ

インターンシップ派遣・受け入れ

  1. 医学科3年生1名をフランス・ソルボンヌ大学に3ヶ月派遣
  2. フランス・ソルボンヌ大学より修士学生1名を3ヶ月受け入れ
  3. タイ・マヒドン大学より医学科2年生1名を1ヶ月受け入れ

仏ソルボンヌ大学のSonia Karabina教授とのコラボレーションを開始し、岡山大学医学科3年生を研究インターンシップ生として派遣しました。この派遣で体験した医学研究の楽しさは、インターンシップ生の人生に大きな影響を与えました。また、ソルボンヌ大学の修士学生のMaxence Maireは岡山大学の高橋チームで臓器チップのマイクロ流体チャネルの流体力学的研究を行いました。タイ・マヒドン大学の医学部2年生 Thanasin Chalermchatは、3Dプリンタを用いた臓器チップのマイクロ流体チップ開発に取り組みました。

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論文出版

  1. Rumaisa Kamran, Yun Liu, Qiang Li, Keiji Naruse, Ken Takahashi. Facilitated differentiation of induced pluripotent stem cells into cardiomyocytes in a microfluidic chip. J Physiol Sci. 2023 May 30; 73(S1) 163-163.
  2. Qiang Li, Yun Liu, Mengxue Wang, Yin Liang, Keiji Naruse, Ken Takahashi. Development of a lung fibrosis model using lung epithelial cells, fibroblasts, and vascular endothelial cells . J Physiol Sci. 2023 May 30; 73(S1) 166-166.
  3. Petpiroon N, Netkueakul W, Sukrak K, Wang C, Liang Y, Wang M, Liu Y, Li Q, Kamran R, Naruse K, Aueviriyavit S, Takahashi K. Development of lung tissue models and their applications. Life Sci. 2023 Dec 1;334:122208.
  4. Yun Liu, Rumaisa Kamran, Xiaoxia Han, Mengxue Wang, Qiang Li, Daoyue Lai, Keiji Naruse, Ken Takahashi. Development of a human heart-on-a-chip model using induced pluripotent stem cells, fibroblasts and endothelial cells. bioRxiv. 2023; 2023.12.06.569751
  5. Mengxue Wang, Harumi Idei, Chen Wang, Yin Liang, Yun Liu, Yusuke Matsuda, Ken Takahashi, Hiroshi Kamioka, Keiji Naruse. Effect of mechanical stretching stimulation on maturation of human iPS cell-derived cardiomyocytes co-cultured with human gingival fibroblasts. bioRxiv. 2023; 2023.12.15.567696

論文3は、UNCTAD-岡山大学の共同プロジェクトによる肺チップ研究の総説論文です。大気汚染物質が肺に及ぼす影響を調べる目的で、ヒト肺チップ開発の共同研究を行っています。論文4は博士学生Yun Liuによるもので、彼の博士課程での心臓チップ研究の集大成です。論文5は博士学生Mengxue Wangの博士論文で、心臓チップの関連技術を開発しました。論文4, 5は現在、査読付き国際誌に投稿中です。

学会発表

  1. Rumaisa Kamran, Yun Liu, Qiang Li, Keiji Naruse, Ken Takahashi. Facilitated differentiation of induced pluripotent stem cells into cardiomyocytes in a microfluidic chip. 第100回日本生理学会大会. 2023年3月15日(京都) 日本生理学会
  2. Qiang LI, Yun LIU, Mengxue WANG, Yin LIANG, Keiji NARUSE, Ken TAKAHASHI. Development of a lung fibrosis model using lung epithelial cells, fibroblasts, and vascular endothelial cells. 第100回日本生理学会大会. 2023年3月15日(京都) 日本生理学会
  3. Xiaoxia Han, Yun Liu, Mengxue Wang, Rumaisa Kamran, Qiang Li, Daoyue Lai, Keiji Naruse, Ken Takahashi. Development of a lung fibrosis model using lung epithelial cells, fibroblasts, and vascular endothelial cells. 生体医工学シンポジウム2023. 2023年9月9日(熊本) 日本生体医工学会
  4. Qiang LI, Yun LIU, Mengxue WANG, Yin LIANG, Keiji NARUSE, Ken TAKAHASHI. Development of a lung fibrosis model using lung epithelial cells, fibroblasts, and vascular endothelial cells. 第75回 日本生理学会中国四国地方会. 2023年10月28日(岡山) 日本生理学会
  5. Ken Takahashi. Development of an innovative drug testing system using human organ chips. TAMU Cardiovascular Research Institute and JSPS Mini Symposium. Oct 26, 2023 (Austin, USA). Texas A&M University Cardiovascular Research Institute, 日本学術振興会
  6. 李 強, 劉 雲, 王 夢雪, Rumaisa Kamran, 成瀬 恵治, 高橋 賢. 臓器チップ上の血管内皮細胞におけるメカニカルストレス誘発性一酸化窒素放出のライブイメージング系の開発. 第17回 日本臨床ストレス応答学会大会. 2023年11月18日(徳島) 日本臨床ストレス応答学会

博士学生Qiang Liは発表2, 4を、修士学生Rumaisa Kamranは発表1を、留学生のXiaoxia Hanは発表3を行い、臓器チップ研究の成果を報告して実績を積みました。高橋は、臓器チップを用いた病態モデル開発に関し、日本学術振興会主催の招待講演を米テキサスAustinで行いました(発表5)。

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共同研究

  1. 備前化成株式会社
  2. Dr. Nasir Uddin, 米Texas A&M大学
  3. Dr. Riccardo Barrile, 米シンシナティ大学
  4. Dr. Sonia Karbina, 仏ソルボンヌ大学

「臓器チップシステムを用いた食品由来機能性物質の血液脳関門透過性の検証とメカニズム解明」に関する共同研究を備前化成株式会社と開始し、血液脳関門チップの仕様策定を進めています。米Texas A&M大学との共同研究は心臓チップを用いた心不全モデルの開発、米シンシナティ大学との共同研究は腸チップの開発に関するものです。仏ソルボンヌ大学とのコラボレーションは、医学生の研究インターンシップ派遣に関するものです。

メディア報道

  1. 第5回 岡山テックグランプリ. 山陽新聞 2023年3月4日
  2. Physiaura(フィジオーラ)高橋 賢 | ヒト臓器チップによる創薬イノベーションが注目の事業. 創業手帳 2023年9月26日

学術雑誌編集

国際学術誌 Pathophysiologyにて5編の論文を編集し、そのうち2編が出版されました(論文は こちら)。編集により質の高い論文を出版することにより、高橋は科学・医学研究の発展に貢献しています。

論文査読

以下の国際学術誌の論文査読を行い、そのうち2編が出版されました。査読により質の高い論文の出版をサポートすることにより、高橋は科学・医学研究の発展に貢献しています。

  1. Cardiovascular Diabetology (impact factor: 9.3)
  2. Biomedicine & Pharmacotherapy (IF: 7.5)
  3. iScience (IF: 6.107) – 出版された論文は こちら
  4. Disease Models & Mechanisms (IF: 4.3)
  5. Journal of Bioenergetics and Biomembranes (IF: 3.853)
  6. Journal of Personalized Medicine (IF: 3.4) – 出版された論文は こちら

講義・実習

高橋は、医学科学部生および医歯薬学総合研究科の大学院生に講義・実習を行うことにより、将来の医療を担う人材、および医学研究の発展に貢献する人材の育成を行なっています。

生理学では、消化器、血液、代謝の項目に加え、臓器チップ研究について講義を行い、研究がいかに医学の発展を導くかについて語りました。

基礎病態演習では、医学教育の国際化を目標に、科目責任者の一人として留学生を含む英語班制度の運営に尽力しました。

留学生を含む大学院生を対象とした人体生理学および心筋梗塞特論では、英語による講義を行いました。

また、研究方法論基礎では、大学研究の産業応用を視野に、研究における特許戦略について講義を行いました。

授業科目名対象受講者数授業時間
医学セミナー医学科1年生610.5
生理学医学科2年生11312
生理学実習医学科2年生11142
基礎病態演習医学科3年生10849
人体生理学修士学生184.5
心筋梗塞特論博士学生141.5
研究方法論基礎博士学生~502

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Takahashi Lab at Okayama University uses principles of physiology, cellular and molecular biology, biomecial engineering and biophysics. The purpose of the lab is to develop science and medicine by unveiling the mechanisms of diseases through collaborations with scientists, epidemiologists, and corporate alliances. The alliance includes Harvard University, Texas A&M University, Sorbonne University, University of Cincinnati, and PD Aerospace, Ltd.

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